本記事ではフランス政府がSDGs(持続可能な開発目標)への取り組みとして立ち上げたプログラム・French Tech Green 20について紹介します。
フランスは政府が積極的にSDGs活動や、その関連スタートアップに支援し、フランス国内、ヨーロッパのみならず、世界でリーダーシップを取れることを目標として掲げています。
本記事で紹介するFrench Tech Green 20、通称 FT Green 20 もその目標達成のためのプログラムです。以下、本プログラムに選ばれたスタートアップと共に、その内容を詳しく見ていきましょう。
環境問題に関わるスタートアップを支援する FT Green 20
このFT Green 20というプログラムは、政府が環境問題を解決しうるスタートアップを20社選び、支援するというものです。
冒頭にも書きましたが、目標は世界でリーダーシップを取れる企業を育てること。大きな目標がゆえ、政府からの支援も大きく、多くのスタートアップがこのプログラムに選ばれようとしのぎを削っています。
FT:French Tech(フレンチテック)とは?
そもそも、French Techとはなんでしょうか?
French Techとは、フランス政府によるスタートアップ支援政策です。
毎年、有望なスタートアップが40社(プログラムによってはさらに80社を加えた合計120社)が選ばれ、政府からの支援を受けることができます。
これは非常に名誉なことですし、大きな宣伝効果があります。
実際に、私の、French Techに選ばれている会社に勤めているフランス人の知人は、LinkedIn等でよくアピールしています。
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FT Green 20に選ばれているスタートアップ
それでは、FT Green 20に選ばれているスタートアップはどのような企業なのか、実際に見ていきましょう。
ALGAMA : “藻”食品の研究開発
“藻”食品の研究開発により、動物性たんぱく質に代わる栄養食を目指すフランスのスタートアップ・ALGAMA。
サステイナビリティを目指すヴィジョン+veganブームの波にも乗って、これから伸びそうな予感がします。
こういった、いわゆる「フードテック(FoodTech)」は近年、サステナビリティとの関連性が強くなっており、この分野にたくさんのスタートアップが生まれています。
以下の記事では、フードテックの意義の移り変わりと、それに伴って誕生した欧州スタートアップを紹介しているので、ぜひご覧ください。
Kayrros : 衛星画像解析でカーボン排出量を計測
Kayrrosは、衛星画像やドローンで撮影した画像をAIで解析し、工場のカーボン排出量や、地形の3次元データ、プラントの状態など、環境に関わるKPIを算出するスタートアップ。
このシステムを導入することで、自社の環境問題へのインパクトを改善できるのはもちろん、客観的なデータを公開することで投資家たちへのアピールにもなるとのこと。
namR : 施設や設備をデータ化→AIで解析
企業内の施設や設備をデータ化し、AIにより最適な提案(設備の配置など)を導き出してくれる namR。特に、エネルギーの観点から最適解を探してくれる点をアピールしています。
このスタートアップはデータの取得から、データの解析(ユーザ好みのデータに加工する処理も含む)、データの可視化までend-to-endでサービスを提供しています。可視化されたデータはAI、Big dataの知識が無くても理解できるとのこと。
Deepki : 企業データからカーボン排出量を定量的に解析
このDeepkiも、先に紹介したKayrros同様、カーボン排出量を算出するサービスを提供しているのですが、違いは、画像解析等ではなく、企業の消費電力等の数値データを解析し、算出する点です。つまり、「真面目な、正攻法で」排出量を算出しています。
私の理解では、このDeepkiの売りは、データの可視化にあります。具体的には、企業データを時系列でデータを参照することができます、つまり先月から減った・増えたが表示されるため、一つ一つの活動の結果のフィードバックを受け取ることができます。
BeFC : 紙と酵素から電気を生成
スタートアップ・BeFCは、紙と酵素を用いて電気を生成する技術を研究開発しています。つまり特別な物質を必要としない、発電技術です。
新しいクリーンエネルギーの研究開発が求められている昨今、その代表格になれるか、期待したいところです。
DualSun : 太陽光パネルで電気と熱を同時に生成
太陽光パネルにより、発電だけでなく、熱湯(つまり熱)を生成するDualSun。
特に発電は従来の3倍以上の効率を達成。
ダイキン(Daikin)とパートナーシップを結んでいる。
Lhyfe : 海水+風力発電によりCO2フリーで水素を生成
次世代エネルギーとして期待される水素を、海水+風力発電により二酸化炭素の排出せずに生成するLhyfe。
フランス政府も「水素普及計画」を2018年に発表し、CO2フリーの水素の利用を推進しているとのこと。再生可能エネルギーの普及には当然、国も応援。
Greenly : カーボン排出量を可視化するダッシュボードを開発
Greenlyはカーボン排出量を可視化するダッシュボードを開発し、さらにそこでの情報をもとに環境の専門家によるコンサルティングを提供。
既に、大企業を含めた250以上のクライアントを所持。
カーボン排出量の可視化には多くのスタートアップが取り組んでいるが、Greenlyの特徴の一つはIT関連に強いこと。GCP(Google Cloud Platform)やAWS(Amazon Web Service)といったクラウドサービス使用時のカーボン排出量も計算することが可能。
近年、多くのサステナビリティを意識したスタートアップが誕生
近年、環境問題や、地球全体のサステナビリティへの意識が高まっているせいか、それらの点を意識したスタートアップがたくさん誕生しています。
例えば、身近なところで言うと、廃棄プラスチックからアウトドアグッズを開発・販売しているQaouという会社も、フランス・マルセイユ発のアウトドアブランドです。
彼らは廃棄ペットボトル数百本からテントやハンモックといったキャンプグッズを開発しています。
画像参照元:https://internetcom.jp/207272/qaou-beluga-sold-at-makuake-shop-in-shibuya
日本でもキャンプブームなので、もしこれからグッズを揃えようと考えている方は、「どうせ使うならサステイナブル商品」という選択はいかがでしょうか?
カーボンフットプリントの可視化・定量化がトレンド?
上で紹介したKayrros、Deepki、Greenlyといったスタートアップは、二酸化炭素を含む温室効果ガスの排出量を可視化する事業を行っています。
近年、カーボンニュートラル(カーボンフットプリント(排出量)をゼロにする働き)への注目度が大きくなっており、これを実現する第一歩目が、今の状況を把握すること、つまり排出量の可視化・定量化になります。
また、カーボンフットプリントは監査でも扱う情報であるため、全ての会社が顧客対象となります。そのマーケットの大きさからも、このようにトレンドになっているのでしょう。
以下の記事でカーボン排出量の可視化に取り組むスタートアップをまとめているので、興味のある方は是非ご覧ください。
国をあげてのスタートアップ支援
上のFrench Techも例にあるように、フランスやヨーロッパ諸国は国をあげてスタートアップを支援しています。
本記事で紹介しているような環境問題に取り組む企業は、(もちろん内容によりますが)長い期間の研究を要するものも多いです。それでも企業が存続し、最終的に結果までたどり着けるのは、充実した支援策、そして周りからの応援が理由の一つでしょう。
例えばフランスは大統領自ら、SNSでスタートアップの応援をしています。これによってスタートアップ界隈の人は特に盛り上がるはずです。
まとめ
本記事では、フランス政府の特にSDGs関連のスタートアップを支援する政策・French Tech Green 20プログラムについてと、そのプログラムに選出されたスタートアップをいくつか紹介しました。
クリーンエネルギーの研究開発から、AIを用いたものまで、多様なスタートアップを見て取れたと思います。その中でもデータ解析技術を用いてカーボン排出量を算出するサービスが多かったのが、私としては印象的でした。これらの発想は、近年のホットトピックであるAIやDXに、SDGsを掛け合わせることで出てきたのではないかと予想します。
フランスだけでなく、他の欧州諸国に関する情報も発信
また、本ブログでは、フランスに限らずヨーロッパ諸国のSDGsに関する取り組み、課題も紹介しています。例えば以下の記事はカーボンフットプリントを見えるかする北欧のプロジェクトに関するものです。是非併せてご覧ください。
また、欧州各国が取り組んでいるペットボトルごみの削減や、リサイクルのための取り組みも、以下の記事にまとめています。是非併せてご覧ください。
さらに、以下のTwitterアカウントでは、ヨーロッパのスタートアップ情報、SDGs関連情報をほぼ毎日発信しています。是非フォローお願いします。
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