本記事では、フランスで最近可決された法案:
「1000人以上の企業において、2030年までに経営層幹部の4割以上を女性にすることを義務化」
について紹介します。
2020年に結成された新政府では、閣僚の女性割合が4割を超えたフランス(31人中14人が女性)、
今度は企業の経営層にも女性の進出を後押しを法律によって目指します。
これはSDGs案件です。
SDGsの目標の一つに「ジェンダー平等」が掲げられているので、これを達成するために、フランスは国を挙げて動き始めました。
SDGs 目標5:ジェンダー平等を実現しよう
最近、耳にする機会が多くなった「SDGs」と言う言葉。
皆さんご存知だと思いますが「Sustainable Development Goals(持続的な開発目標)」の略です。
このSDGsでは17の世界的目標、そして169の達成基準、232の指標が示されています。
その「17の世界的目標」の一つに以下のものがあります:
目標5:ジェンダー平等を実現しよう
これは長い間、叫ばれ続けている目標ですが、実際にはまだ実現できていません。
今でも世界では、女性と言うだけで望んだ仕事に就けなかったり、十分な教育が受けられなかったり、性別による差別が存在します。
この背景のもと、男性と女性の社会的平等を実現しようとしているのがこの目標です。
ヨーロッパ諸国、特に北欧はジェンダー平等が進んでいる
この目標の話になると必ず話題に挙がるのが北欧諸国、フィンランドやスウェーデン、デンマーク、ノルウェーなどです。
象徴的な出来事としては、2019年に発足したフィンランド政府の首相は女性(しかも当時34歳の若さ!)であったり、2021年にはスウェーデンでも初めての女性首相が誕生しました。ドイツも、有名な女性首相、メルケルさんが長い間、任期を務めていましたよね。
SDGsの達成度ランキングを見ると、北欧諸国でさえも、この目標「ジェンダー平等」に関してはまだ「課題あり」と評価されていることが多いようですが、それでも世界の先頭を走っているのは間違いありません。
日本の「ジェンダー平等」に関する評価は『大きな課題あり』
以下の記事で各国のSDGs達成度ランキングを紹介しているのですが、2021年、日本は総合18位で、「目標5:ジェンダー平等を実現しよう」に関しては『×× 大きな課題あり』と評価されています。
「日本はジェンダーギャップが大きい」と良く言われていたので想像はしていましたが、やはり他の国に比べると評価は低いです。
最近でこそ育休の取得率や女性管理職が注目され始めましたが、まだまだ、といったレベルなのでしょう。
フランスでは企業の経営層幹部の4割を女性にする法案が可決
そんな中、2021年、フランスでは従業員数1000人以上の企業に対して、2030年までに経営層幹部の4割を女性にすることを義務付ける法案が可決されました。
より詳しくは、2027年までに30%、2030年までに40%の女性の経営層幹部を実現させるのが目標とのことです。そして、対象の企業は毎年、女性幹部の割合を公表しなければなりません。
これが達成できなかった企業に対しては罰金が科せられます。
かなりタイトなスケジュールな気がするので、筆者が予想するに、女性幹部候補の人材確保のための競争が起きるのではないかと思います。
しかし、これによって女性幹部の割合は確実にアップするでしょう。
ちなみに日本は、上場企業における女性役員割合が7.5%とのことです(2021年7月時点)。
フランス政府の閣僚は既に4割以上が女性
2020年に発足したフランス政府の閣僚は、31人中14人が女性、つまり45%が女性で構成されています。
これは、2000年に、議員下院の選挙における候補者を、男女同じ数にすることが義務付けられたことによる結果でしょう。それから20年が経ち、成果が見られています。
また、フランスが誇る世界的大企業・L’Oréal(ロレアル)も、役員の40%、管理職の51%が女性という驚異的な数字をたたき出しています。
「女性の割合を~%以上に義務付ける」というのは、やや強行策のようにも見えますが、実際にそれで成果があがっており、何よりもこれで社会が変わっていくのであれば、積極的に試してみるのが良いのではと私は思います。
とは言え、フランス市民としては「まだまだ達成できていない」感覚
私はフランスで現地採用してもらい、つまりフランス人や多くのヨーロッパ人に囲まれて仕事をしていますが、実際に、(日本と比べると)男女が対等に仕事をしている印象を受けます。
仕事の内容もそうですが、例えば育児を見ても、子供の送り迎えに行く父親も普通に目にします。フランスの多くの家庭が共働きであるため(女性就業率80%以上)、バランスを取って、平等に役割分担して家事と育児を行っています。
もちろん、例えば学童が遅くまで使えたり、ヌヌさんと呼ばれるベビーシッターさんを利用しやすかったりといった社会インフラが充実している点もありますが、それも含めて、長い間「ジェンダー平等」を目指してきた結果なのでしょう。
ただし、そんな話を私の周りのフランス人にすると、「確かに平等になってきているけど、まだまだ課題がある」と言います。彼らによると、フランスでもまだまだ昔の男性社会、学歴社会のなごりがあり、女性が不利になる場面が多いとのこと。
そして北欧諸国に比べると、まだ達成度が低いとみんな言います。
そんなわけで、フランスは上述した法律などを使って更なる「ジェンダー平等」を目指しているのでしょう。
まとめ
本記事では、フランスの「ジェンダー平等」に対する取り組みを中心に、ヨーロッパ諸国の事例を紹介しました。
日本において「ジェンダー平等」は長くから議論されている大きな課題の一つだと思います。北欧諸国の取り組みなどを参考に、日本社会に合った取り組みを是非考えてもらいたいですね(←他人事ではなく、自分もそのように行動しないといけませんよね)
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