温室効果ガス排出量の可視化を目指すSDGs関連の欧州スタートアップ

温室効果ガス排出量の可視化を目指すスタートアップ SDGs
温室効果ガス排出量の可視化を目指すスタートアップ

カーボンニュートラル(カーボン排出量をゼロにする動き)、脱炭素が叫ばれている今、二酸化炭素などを含む温室効果ガスの排出量を可視化するソフト・サービスが注目されています。

最近では、Googleが自社のGCP(Google Cloud Platform)の使用状況から二酸化炭素の排出量を表示する機能を公開していました。

そこで本記事では、このカーボン排出量の可視化に取り組むスタートアップを紹介します。

ビジネスとしても、地球温暖化防止のためにも今注目されているこの技術、環境意識の高いヨーロッパでは特に関連スタートアップが乱立しています。

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カーボン・ニュートラルとは?

近年、ますます注目されているカーボンニュートラル
近年、ますます注目されているカーボンニュートラルのための活動

カーボンニュートラルとは、二酸化炭素などを含む温室効果ガスの排出量を全体としてゼロにすることです。

「全体として」という言葉は、排出量を完全にゼロにするということではなく、排出量をから植林や森林管理による「吸収量」を差し引いた値をゼロにするという意味で使われています。

日本政府は、2050年までにカーボンニュートラルを目指すと宣言しました。

参照:https://ondankataisaku.env.go.jp/carbon_neutral/about/

カーボン・オフセットとは?

また、吸収量について、自国だけで行うのではなく、「他の場所」での活動により、温室効果ガスを削減・吸収するということもできます。これがカーボン・オフセットです。

この、他の場所で吸収された温室効果ガスは、定量化され『クレジット』として市場で取引されます

つまり、お金を払って温室効果ガスを買ってもらうのです。

これは、例えば産業は進んでいないが、多くの自然を持つ発展途上国などにとって、予算を獲得する手段として現在注目されています。

排出量の見える化の重要性

カーボン排出量の可視化システム
カーボン排出量の可視化システムの役割

カーボン・ニュートラルを達成するためには、まず現在の温室効果ガス排出量を把握し、そのように減らしていくかの戦略を立てる必要があります。

そこで重要になるのが「カーボン排出量」の可視化・定量化です。

可視化・定量化は、簡単に言うと上の図のようにグラフ化することです。

現在、どのくらいの量を排出しているのか(定量化)、何によって、または、どこから排出されているのか(可視化)を理解することが第一歩目です。

また、上で説明したカーボン・オフセット(排出量の取引)のためにも定量化や可視化は不可欠な技術です。

さらに、今後、温室効果ガスの排出量が監査や企業を評価において重要な役割を担っていきます。そのためにもこの技術の導入は待ったなしと言えるでしょう。

カーボン排出量の可視化に取り組むスタートアップ

排出量の可視化からカーボンニュートラルを目指す
排出量の可視化からカーボンニュートラルを目指すスタートアップ

ここからカーボン排出量の可視化、および、その情報を使ってビジネスを行っているスタートアップを紹介していきます。

国民の環境意識が高いということと、筆者が住んでいるという理由で、ヨーロッパを中心にスタートアップを調べました。

Climatiq :ベルリン発・カーボン排出量可視化SaaS

Climatiqはカーボンフットプリントを見える化するプラットフォーム(SaaS)を開発するベルリンのスタートアップ。

強みとしては、150カ国からのデータ取得経験を活かした解析。
移動やロジスティクス、クラウドコンピューティングなどの状況を見て、カーボン排出量をリアルタイムに自動計算し、可視化する。

Emitwise : ロンドン発・温室効果ガス排出量レポーティングシステム

企業の温室効果ガス排出量を自動計測、レポーティング、削減提案を行うプラットフォームを開発しているロンドン発のスタートアップ・Emitwise。

「carbon equals cost and risk」の考えのもと、地球温暖化を緩和させるためにカーボンフットプリントの見えるかを進める

特徴は人工知能(AI)を使って、排出量の多い「ホットスポット」を見つけること。

Kayrros : フランス発・衛星画像解析でカーボン排出量を計測

Kayrrosの特徴は、衛星画像やドローンで撮影した画像をAIで解析し、排出量を算出すること。

具体的には、工場のカーボン排出量や、地形の3次元データ、プラントの状態など、環境に関わるKPIを算出する。

このシステムを導入することで、自社の環境問題へのインパクトを改善できるのはもちろん、客観的なデータを公開することで投資家たちへのアピールにもなるとのこと。

Greenely : ストックホルム発・スマートエネルギープラットフォームを開発

Greenelyは各家庭の電気等のエネルギー消費量をグラフ化し、その消費量を下げる提案、つまり、支払額を減らす提案を行う。

また、スマートフォン対応しており、消費電力のピーク時間帯(=電気代ピークの時間帯)をスマホに知らせて、ユーザにその時間帯での消費を抑えるように促す。

個人をターゲットとしたサービスを展開。

Greenly : フランス発・クラウドサービス使用によるカーボン排出量を可視化

一つ上で紹介した、ストックホルム発のGreenelyとは一文字違いのGreenly。

このスタートアップもカーボン排出量を可視化するダッシュボードを提供しているが、他社との違いは環境の専門家によるコンサルティングが受けられることである。

つまり、排出量の可視化に加えて、その後のアクションまでビジネスに含んでいる。

また、IT分野に強く、GCPやAWSといったクラウドサービス使用による二酸化炭素排出量も算出可能。

CHOOOSE : ノルウェー発・カーボンオフセットを促進するポータルサイト

CHOOOSEは、カーボン排出量を見える化し、カーボンオフセット(排出量の取引)を促進するポータルサイト「MyCHOOOSE」を運営しています。

このポータルサイトでは、少ないカーボン排出量での活動を行っている環境プロジェクトやコミュニティ(例えば、ソーラーエネルギーだけで生活しているコミュニティ)に対して容易に金銭支援を行うことが出来る機能などが備わっています。

このCHOOOSE社に関しては以下の記事で詳しく紹介しています。

Deepki : フランス発・企業データからカーボン排出量を可視化・定量化

Deepkiは、企業の消費電力等のデータを収集、解析することで、カーボン排出量を計算する。

このDeepkiの売りは、時系列でデータを参照できること。
これによって、先月より増えた/減ったがわかりやすく、カーボンニュートラルに向けて段階的にアクションを設定することができる。

CarbonSpace : ダブリン発・農業や林業に特化したカーボンフットプリントの可視化

CarbonSpaceは、AFOLU(Agriculture, Forestry, Other Land Use = 農業、林業、その他「土地」を使った産業)に特化したカーボンフットプリントの可視化プラットフォームを開発しています。

算出方法は、衛星画像や各種センサーからのデータ、企業の資産データからAIを用いて排出量を算出するとのこと。

Googleも取り組む二酸化炭素排出量の表示(可視化)

先日、クラウドコンピューティングサービスの最大手・GCPを運営しているGoogleが、クラウド使用による二酸化炭素排出量を表示する機能を提供すると発表しました。

今や、カーボンニュートラルを目指す活動は企業価値を上げるブランディング戦略ですが、クラウドサービスを所持するGoogle自らが排出量を可視化することは、自分の首を絞めかねません。
(排出量を可視化することで、利用者が減る可能性もあるから)

しかし、このような機能提供に踏み切ったのことから、例え業績が落ちようが環境を最優先に考える強い思いと覚悟が感じられました。

個人的にはかなりの好印象、やはり世界を牽引するGoogleだなと思いました。

フランスでは国を挙げて環境問題に取り組んでいる

フランス政府は、国策として、環境問題に取り組むスタートアップを支援しています。

そのために、French Tech Green 20というプログラムを立ち上げ、そこで選ばれたスタートアップは事業をより拡大するために支援が受けられます。

以下の記事は、そのFrench Tech Green 20について、また選ばれたスタートアップについてまとめてあるので、興味のある方は是非ご覧ください。

まとめ

二酸化炭素を含む温室効果ガスの可視化は、カーボンニュートラルを目指すうえでの第一歩。

それゆえ、特に環境意識の高いヨーロッパでは、この可視化技術を提供するスタートアップが最近特に多く生まれています。完全にトレンドです。

この状況に加えて、Googleも可視化に乗り出し、状況はどうなっていくのか・・これからもウォッチして、本ブログやツイッターで情報発信していこうと思います。

日本ではまだトレンドになるまで流行っていない状況なので、参入のチャンスかもしれません。

筆者プロフィール
この記事を書いた人

フランス在住(現地採用)。工学博士。移民。
大学時代から人工知能・コンピュータビジョンの研究に従事し、現在までにディープラーニングを用いたCT画像中の肺結節の悪性判定システムや、車載センサーデータにおける認識処理を用いた自動運転システムの開発を遂行。

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