欧州を代表する企業L’Oréal(ロレアル)のSDGsへの取り組み

L’Oréal(ロレアル)が目指す持続可能な社会 SDGs
L’Oréal(ロレアル)が目指す持続可能な社会

本記事では、ヨーロッパを代表する大企業のL’Oréal(ロレアル)が本気で目指しているサステナビリティ実現のための活動や目標を紹介します。

ロレアルはずいぶん前からこの活動を始めており、現時点で既に世界的な評価を受けている、SDGs関連では最先端を行く企業です。

しかし、彼らはそれに飽き足りず、近年はさらに力を入れて、本気で地球のことを考えて行動しています。

本記事で紹介するロレアルのサステナビリティへの取り組みや目標が多くの企業の参考になれば幸いです。

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サステナビリティへの意識が高い L’Oréal(ロレアル)

L’Oréal(ロレアル)の環境問題・社会課題への取り組み
L’Oréal(ロレアル)の環境問題・社会課題への取り組み

ロレアルと言えば、化粧品やヘアケア商品、日焼け止めなど誰でも一度は使ったことがある、と言っても過言ではない、超大企業です。

そんなロレアルが、サステイナブルな社会(持続可能な社会)の実現を目指し、すごくアグレッシブな活動を行っています。

「環境に優しい商品」を作ることは、特別な素材を使わなければならなかったり、より多くの試験(検証実験)を行う必要があるため、企業としては利益が落ちてしまうことが多いです。

それでもなぜ、ロレアルは取り組むのか、それは彼らが本気で地球の未来を考えているからです。

SDGsブームに乗ったわけではなく、かなり前から活動している

近年、SDGs(Sustainable Development Goals = 持続可能な開発目標)という言葉をよく聞きますし、環境問題へ取り組むための世界的な会合が頻繁に開かれています。

悪い言い方をすれば、SDGsはある種ブームになっており、企業ブランド価値を上げるためだけにSDGsへ取り組む企業も少なくありません。

ロレアルはどうでしょうか? SDGsという言葉が生まれる前から、環境問題やサステナビリティを意識して活動してきています。

1989年以来、研究開発における動物実験を廃止

例えば以下のツイート、ロレアルは商品開発において、1989年から、動物を使った実験を止めています。

海水を汚さない日焼け止めクリームの開発

また、海やビーチでの必需品、日焼け止めクリームにおいても、環境問題に配慮しています。

日焼け止めクリームは海に入ると流れ落ちてしまい、それが海水の汚染につながります。

そこでロレアルは海水を汚染しない日焼け止めクリームの商品開発に取り組んでいます。

環境への取り組みについて世界的に評価されている

SDGs・環境問題を解決し持続可能な社会を実現
SDGs・環境問題を解決し持続可能な社会を実現

上で説明したように、ロレアルはかなり前から環境問題を意識してビジネスを行ってきたため、既に多くの実績を出しています。

例えば以下のような実績がHPにて公開されています。

CO2排出量:78%減

2005年以降、グループは、生産量を37%増加させる一方で、工場と配送センターのCO2排出量を絶対値で78%削減しました。

https://www.loreal.com/ja-jp/japan/pages/commitments/l-oreal-for-the-future-jp/

これから取り組む企業が多いCO2排出量問題、ロレアルは既に-78%を達成しています(2005年の排出量との比較)。

具体的には、以下のような活動を通してCO2排出量を削減しています。

  • 工場のボイラー設備の見直し・刷新
  • 事業車を電気自動車へ代用
  • 物流配送ルートの見直し

CO2の削減は現在多くの企業が取り組みを開始し、それに伴って、CO2を含む温室効果ガスの排出量の可視化システムの導入が進んでいます。特に環境意識の高いヨーロッパはそういったシステムを開発するスタートアップが数多く誕生しています。

14工場を含む35のカーボンニュートラル拠点を有す

2019年末時点で、ロレアルは、14の工場を含む35のカーボン・ニュートラル拠点(再生可能エネルギーを100%使用していることを意味します)を有しています。

https://www.loreal.com/ja-jp/japan/pages/commitments/l-oreal-for-the-future-jp/

ここで書かれているように、現時点で、14工場を含む35の拠点でカーボンニュートラルを達成しているとのことです。

そして2025年までに再生可能エネルギーを100%採用ということを目標に掲げています、つまり全拠点でカーボンニュートラル達成を目指しているということです。

CDPランキングでは3つの指標全てで最高評価

環境情報開示を推進している国際NGOのCDPによる評価は、世界が注目している指標の一つです。

ロレアルは、そのCDPが付ける評価ランキングにおいて、3つの指標「気候変動」、「水管理」、「森林保全」において、全てトリプルAの評価を受けています。

しかも、現在までに4年連続でこのトリプルA評価を受けており、これは世界唯一の企業だそうです。

使用済み化粧品容器を回収するリサイクル活動

上で説明してきた活動は、企業内で行っていることが多いですが、我々消費者も参加できる仕組みをロレアルは作っています。

その中の一つが、使用済み化粧品容器の回収です。

具体的には、店舗に回収ボックスを設置し、回収されたものをリサイクルして再利用するという、至極シンプルな活動。

しかし、このシンプルさゆえに実現しやすいですし、消費者もその意図をよく理解できます。

環境問題への取り組みは、自分たちだけでなく消費者など、いかに多くの人を巻き込めるかがポイントになるため、このような活動は効果と一体感の両方が得られると言えます。

2030年に向けた目標:ロレアル・フォー・ザ・フューチャー

2020年、ロレアルは10年後への目標を大々的に公表し、話題を集めました。

その名も「 L’Oréal for the future( ロレアル・フォー・ザ・フューチャー )」。

以前(2013年)にも、サステイナブルプログラムという目標を立てていましたが、今回はそれをアップデートしています。

この ロレアル・フォー・ザ・フューチャー において、以下の3つの大きな柱を掲げています:

1. プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)の尊重

限界を超えた活動や開発は人間が安全に生活できる場所を壊すという考えに基づき、地球の限界の「範囲内」で事業活動を行うことを約束しています。

2. ビジネスのエコシステムを強化

顧客、サプライヤー、消費者を巻き込んだ、サステイナブルな変革をおこなうエコシステムを構築することを目標としています。つまり企業内の人が行う活動だけでなく、より大きな範囲で課題解決に取り組んでいくことを意味しています。

3. 社会的・環境的ニーズに支援することで世界の課題を解決

ビジネスモデルの変革だけでなく、世界が直面している社会的・環境的な課題の解決に取り組みます。具体的には生態系の再生とサーキュラー・エコノミー(循環経済)の発展のためのインパクト投資や、女性の地位向上を支援するための事前募金(5千万ユーロ)を行うとのことです。

SDGsにおいて注力している目標

これまでに、ロレアルの環境問題、社会課題解決への取り組みを紹介してきましたが、近年は社会課題がSDGsとして明確に定義されているので、それに沿って説明したいと思います。

ご存知の方も多いと思いますが、SDGsには17の目標が掲げられており、それぞれにおいて達成度が評価されます。

例えば以下の記事では、各国の達成度がまとめられています。

ロレアルが特に注力しているSDGs目標

ロレアルとしては、SDGsの17目標のうち、以下の4つに特に注力しています。

  • ジェンダー平等(目標4:ジェンダー平等)
  • 持続可能な消費と生産(目標12:つくる責任 使う責任)
  • 気候変動(目標13:気候変動に具体的な対策を)
  • グローバル・パートナーシップの活性化(目標17:パートナーシップで目標を達成しよう)

出展:https://www.wwdjapan.com/articles/1092577

ジェンダー平等:女性の社会進出支援

ロレアルによるSDGsの取り組みのなかで、最もインパクトのある活動の一つが「目標4:ジェンダー平等」に対するものだと私は思います。

例えば、日本ロレアルは、「役員の40%、管理職の51%が女性」とのことです。

これは驚くべき数字で、例えば厚生労働省に調査によると、2020年、日本企業における女性管理職比率は11.9%とのことなので、ロレアルがいかに女性の社会進出を意識しているかがわかります。

また、シングルマザーの課題解決のために、就業支援プログラムを運営しています。

具体的には以下のような講座を用意しています。

  • 基本講座:「コミュニケーション」、「身だしなみ」、など
  • 美容職コース、事務職コースなどの専門コース

出展:https://www.sbbit.jp/article/cont1/69729

ジェンダー平等は世界的に叫ばれている課題、フランスでも最近、女性経営幹部の割合を上げるための法案が通りました。

ロレアルは既にこの課題に取り組んでおり、成果を出していると言えます。

まとめ

誰もが知る世界的大企業の L’Oréal(ロレアル)、こういった企業がリーダーシップを取って、環境問題や社会課題解決に取り組んでいくことで、世界は変わっていくのではないでしょうか。

世間的には環境問題への取り組みは企業の経済的成長と両立するのが難しいという意見が多く、私もそう思いますが、ロレアルの活動は、その難しい両立に挑んでいるように見えます。

実際、既に様々な活動を行っていて、結果も出しているので、彼らが一つのロールモデルとなり、他の企業が参考にしていくのではないでしょうか。

筆者プロフィール
この記事を書いた人

フランス在住(現地採用)。工学博士。移民。
大学時代から人工知能・コンピュータビジョンの研究に従事し、現在までにディープラーニングを用いたCT画像中の肺結節の悪性判定システムや、車載センサーデータにおける認識処理を用いた自動運転システムの開発を遂行。

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