本記事では、ヨーロッパにおけるプログラミング教育事情(小学生~高校生)を紹介します。
2児の父としてフランスに在住している筆者が、現地校のカリキュラムを見て、また現地の同僚(インターン生)の話を聞いて得た情報をもとに、どのような教育が行われているかを伝えたいと思います。
2020年から日本の小学校でもプログラミング教育が必修化されましたが、海外に比べると遅いと言わざるを得ません。以下、海外(特にヨーロッパ)の事例を紹介し、みなさんの持つプログラミング教育に対する疑問に少しでも答えられたらと思っています。
そして、お子様にプログラミング教育をさせたいと考えている方に、どんなことから始めたら良いのか、どんなツールを使ったら良いのかなどの参考になれば幸いです。
IT市場の成長とエンジニア不足
これは言わずもがな、IT市場は成長し続けています。これには誰も異論はないはず。
過去20年をみても、インターネット、スマートフォンなど私たちの生活を大きく変える技術が登場し、それに伴い市場も爆発的に成長しました。
しかしながら、その成長に追いつくほどエンジニアは増えていません。むしろ、IT市場との乖離が年々大きくなっています。
例えば日本の現状を見てみると、経済産業省2019年の調査レポートによると、
- 日本国内のIT人材は現在で30万人以上不足している
- 2030年には45万人不足するだろう
とのことです。
海外に比べて日本は後発?
IT人材不足を解決すべく、欧米を中心とした多くの先進国でプログラミング教育は既に導入されています。
例えばイギリスでは2014年から、Skypeなどを生み出したエストニアでは2012年よりプログラミング教育が導入されたとのことです。
プログラミング授業が始まるタイミングは小学校からが多く、最初はビジュアルプログラミング(キーボードでコーディングするのではなく、ブロックを組み合わせて命令を作るプログラミング)から始まるカリキュラムが主流のようです。
日本では2020年より導入され、話題になっていますが、上の説明のように、周りに比べると後発と言えます。
さらに、導入直後で準備が整っていないからか、日本では「コンピュータを使わないプログラミング学習」から実施されるとのことです ← これ大丈夫? 実際にプログラミングで何か作らせたほうがいいのでは? この点については本記事後半で言及します。
私としては、プログラミング教育は、既存の日本教育では身につかない能力やスキルがたくさん得られる救世主だと思っています。ですので後発とは言え、これからどんどんプログラミング教育を導入していってほしいと期待しています。
以下、プログラミング歴20年の私が考える、子供にプログラミングを教えたほうが良い理由をまとめたので、興味のある方は読んでいただけると嬉しいです。
プログラミング教育における課題
プログラミング教育の導入にあたって、パソコンやタブレットなどの機材の準備はもちろんですが、
一番の課題は:「プログラミングを教えられる人材がいない」こと。
たしかに学校の先生の中ではプログラミングを学んだ経験がある人のほうが少ないと思います。
これは日本に限らず、他の国でも同じ課題を抱えているようで、
それ故にプライベートな子供用プログラミングスクールがたくさん作られています。
例えば以下の「北欧スタートアップ・Code School Finland」では、プログラミングを教える教員のためのトレーニングの提供や、子供達が自らスキルを構築するのを促すフィンランド教育を取り入れたプログラミングスクールを運営しています。
ヨーロッパ諸国のプログラミング教育事例
では実際、海外ではどのようなプログラミング教育がなされているのでしょうか。
以下、具体的な例を紹介していこうと思います。
エストニア
Skypeを生んだ世界最先端のIT国家・エストニアでは、2012年よりプログラミング教育推進プログラムが実施されました。
具体的には小学校1年生からプログラミング教育を開始し、最初はビジュアルプログラミングを使ってゲームを作ったり、ロボットを動かすような、プログラミングに興味を持たせるような授業をしているとのことです。
そして中学生になると、ビジュアルプログラミングから、より高度なテキストコーディング(Pythonなど)へ移行していくようです。
フィンランド
「インターネットに接続する権利」を保証する国として有名なフィンランドでは、2016年から小学校におけるプログラミング教育が必修化されたそうです。
具体的には小学校3年生から、ビジュアルプログラミングを始めるとのこと。
ビジュアルプログラミングとは?
エストニアやフィンランドの説明で出てきた「ビジュアルプログラミング」ってご存知ですか?
ビジュアルプログラミングとはブロックを組み合わせてアルゴリズムを作るプログラミング言語です。多くの国で小学生向けのプログラミング教育に用いられています。
このビジュアルプログラミングの代表格で、世界中で最も使われているのは「Scratch(スクラッチ)」というプログラミング言語です。
ScratchはMIT(マサチューセッツ工科大学)で開発され、無料で配布されています。
私の子供(8歳)も、このScratchを使ってパックマンやインベーダーゲームを作りました。
日本のScratch(スクラッチ)を使ったプログラミングスクール
日本のプログラミング教室でもScratchを使ってゲームを作るコースがあります。
【無料体験】小中学生専門のオンランプログラミングスクール【アンズテック】
このプログラミングスクールではScratchを使って簡単なゲームを作ります。
上のリンクから無料体験ができるので、まず体験してみてお子さんの反応を見てみてはいかがでしょうか?
以下の動画はこのプログラミングスクールの紹介動画です。ご覧いただけたら雰囲気がわかると思います。
イギリス
ヨーロッパの中では一番多くのユニコーン企業を輩出しているイギリスでは、2014年からプログラミング教育が実施されています。
イギリスのカリキュラムは小学校低学年から中学校卒業くらいまでの長いスパンで導入されているため、プログラミングだけでなく、ITリテラシーやコンピュータサイエンス、アルゴリズムの理解なども学ぶことができるようです。
つまり、長く、しっかりプログラミングを含めたIT技術や知識を学ぶ方針です。
フランス
フランスは高校生からプログラミング教育が導入されています。高校では既に文系理系のようなコースが分かれているため、プログラミング科目は全生徒ではなく技術コースなどを選択した生徒のみが受講可能です。
フランスのプログラミング教育の特徴としては、数学の授業の一部として組み込まれていること。それゆえ、プログラミングを使ったゲームやソフトウェア開発ではなく、理論・アルゴリズムの授業があります。
(在仏の意見として)個人的には、フランスはそこまでプログラミング教育が進んでいないと思っています。教育が始まるタイミングも他の欧州諸国よりも遅いです。
しかし、フランスには中学生で2週間ほど企業で労働体験をする制度があり、プログラミングに興味がある子供はソフトウェア開発をしている会社へ行き、プログラミングを体験することができます。
また、ほぼ2か月おきにあるバカンス(2週間休暇、夏は2か月)期間中に、「スタージュ」と言って、好きなスポーツや文化活動などを学ぶ期間限定の教室が開催されます。そこでもプログラミング教室が開催され、気軽にプログラミングにふれることができます(私の息子(8歳)もプログラミング通いました。Scratchを使ってロボットを動かしていました)
ですので、義務教育・高等教育のカリキュラムではプログラミングに触れる機会は少ないですが、興味さえあれば学校の授業以外で学ぶことができます。
現地採用の筆者が感じた海外のプログラミング教育
上にも書きましたが、私はフランス在住で、人工知能を用いたシステムの研究開発を行っているため、プログラミングは日常的に使っています。
そこで、同僚のヨーロッパ人にプログラミング教育について聞いてみると、私の年代では小学校からプログラミングをやっていた人は少なかったものの、専門学校や大学の授業でゲームやアプリを作ったり、グループワークでシステムを開発する実習をしたりと、文法の勉強だけではなく実際に何かを作ってみる授業が多かったと言っていました。
最初に「プログラミングで何ができるか」を教えるべき
私は大学の授業でプログラミング学んだのですが、始めた当初は文法やアルゴリズムの勉強ばかりで、実際プログラミングで何ができるのか、何が作れるのかがわからず、全く興味が持てませんでした。
ですから欧州の教育のように、何か作ってみることで、「なぜプログラミングを勉強するのか」という理由を理解させ、結果的に、もっと勉強してみようという気持ちにさせるのはとても良い方法だと思います。
日本のプログラミング教育は上手くいくのか?
私は、日本のプログラミング教育が、文法ばかり勉強する日本の英語教育の二の舞になってしまうのではと心配しています。
今は導入直後なので上手く教育できるまでにはどうしても時間がかかります、これは仕方ないとは思いますが、子供の成長は待ってくれません。教育方法が確立してからでは遅いかもしれません。
もし本当に子供にプログラミングをやらせてみたいと考えているのであれば、上でも紹介した「何かを作らせるプログラミングスクール」で学ばせた方が良いと個人的には思います。
例えば以下のようなプログラミングスクールで、実際に何かを作らせてみて、「プログラミングで何ができるのか」を最初に教えるのが一番良いと思います。
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まとめ
本記事では近年、多くの国で導入されているプログラミング教育について、現状や課題、そして日本が後発であることなどを説明しました。
また、特にヨーロッパ各国の具体的な導入事例や、フランスで働いている私が同僚の話を聞いて思ったことなども紹介させていただきました。
プログラミングと言うと、まだまだ一部の人が使う技術という認識が強いかもしれません。しかし、やってみるとわかるのですが、様々な仕事や、生活の中でも多くのタスクを効率化できますし、ゲーム作成などエンタメ・創作活動にも使えます。
私自身、プログラミングを学んだことで、アプリやゲームを見てどんな仕組みで動いているのかを考えるようになったり、プログラミングを使えばあんなことやこんなことができるとクリエイティブになれたと思います。
そんな経験から、自分の子供にも7歳からプログラミングをやらせていて、約半年経った今では、自分でサイトや動画を見ながら簡単なゲームを作れるようになりました。
これからの時代、プログラミングは間違いなく強力な武器(スキル)になります。
お子さんに教えたいなと考えている方はまず一度、プログラミングに触れさせてあげてください。
新しい可能性の扉が開くかも?
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