本記事では、フランス政府のスタートアップ支援施策である「French Tech(フレンチテック)」についてと、その中のスタートアップ企業選定プログラム・「Next40/120」について紹介します。
French Techとは具体的に何なのか、どんな基準で支援するスタートアップを選ぶのか、2021年にはどんな分野のスタートアップが選ばれたのか、そして最後にそのプログラムの効果はいかほどかという点をシェアしたいと思います。
本記事の目次は以下の通りです。
French Tech(フレンチテック)とは?
まず、タイトルにも出てくる「French Tech」とは何でしょうか?
フレンチテックとは、2013年に仏政府がイニシアティブを握って開始したスタートアップ支援策の一つ
https://beautytech.jp/n/n643376f18850
つまり国が支援している施策です。対象は国内のスタートアップだけでなく、海外のスタートアップも含まれており、それらを誘致することも目的の一つとしています。
支援を受けるためにはビジネスコンテストの審査に通過する必要があります。一度審査に通過すれば、支援として具体的には、事業助成金や滞在費が数百万円単位で支給されます。また、チームのメンバーや家族に滞在ビザも発行されます。
さらに、滞在期間中はインキュベーション施設に格安で入居でき、そこでメンターを付けながら事業計画の策定、製品試作の開発を行うことができるます。
至れり尽くせり、思い切りビジネスに専念できる環境が用意されます。
Next 40/120 : French Techが選ぶ有望なスタートアップ
French Techの中に「Next 40/(FT)120」という将来有望なスタートアップを40社、120社選ぶというプログラムがあります。このプログラムでは投資家による評価や、または売り上げを指標としてスタートアップが選ばれます。このプログラムでは、選ばれたスタートアップが今後大きく成長こと、世界のリーダーになることを期待し、設立されました。
特に「Next40」に選ばれた40社は、中でも特に有望な企業であり、ユニコーン企業候補と言われています。過去にNext40に先行された企業を見ると、10億ドルの評価を受けた会社や、過去三年間で1億ユーロ以上の資金調達に成功した会社がそれに選ばれています。
※Next40はFT120の中でもとりわけ有望な会社として扱われているとうのが筆者の理解
今年は新たに30社がNext40/120として選ばれている
このNext40/120は毎年選考が行われているのですが、どのくらいの数の企業が新たに選出されているのでしょうか。
French Techの公開情報を見ると、2021年、上記Next 40/(FT)120プログラムにおいて、新たに30社がFT120に、さらにそのうちの12社がNext40に選ばれていることがわかります。つまり、約1/4が入れ替わっていることになります。
毎年、このように入れ替わり戦が行われ、スタートアップ同士がしのぎを削っていることがわかります。
【2021年版】フランスではどの分野にスタートアップが多いの?
トレンドを知るためにも、どの分野でのスタートアップが多いのか、気になるところだと思います。日本ではフィンテックや自動車分野を中心とした製造業・技術系スタートアップ(自動運転など)が多いと思いますが、フランスではどうでしょうか。
以下のソースによると、上記Next 40/(FT)120プログラム・2021年版におけるスタートアップのセクター(対象市場、分野)の割合は以下ようになっています。
- 製造業関連:27%
- 健康産業(ヘルスケア):23%
- フィンテック(FinTech):15%
- クリーンエネルギー・モビリティ:12%
去年(2020年)と比べると、健康産業が20%から23%に、クリーンエネルギー・モビリティ産業が7%から12%にアップしているとのことです。
フランス在住の筆者の個人的な印象
全体的な傾向としては日本と変わらないのかなと思いますが、フランスに住んでいる私の感覚では、日本よりもキャッシュレス化進んでいることもあって、身近なお金のやり取りを便利にするフィンテックや、サステイナビリティに対するヨーロッパ人の意識の高さからクリーンエネルギー分野に関するスタートアップの話をよく聞きます。また、コロナ禍ということもあり、エクササイズ系のヘルスケア(健康産業)は目立っていると思います。
French Techの最近の実績
日本にもFrench Techのような政府の施策や、Next40/120のような有望なスタートアップを選出するコンテストが数多くありますが、実績を上げているものはそれほど多くないと思います。
では、本記事で紹介しているFrench Techおよび、プログラム・Next40/120の実績はいかほどでしょうか?
上述の参照リンクの情報によると、最近の実績として以下の点を挙げています。
- Next40/120の中の30%のスタートアップがÎle-de-France地域(パリを含むフランスの中心地域)の外に会社を構えている
- 調達額が1億ユーロを超えた会社が、2019年は4社だったのに対し、2020年は12社にまで増えた
- 2020年には1万人の雇用を創出した
- 過去12か月の間に、従業員数が25%増加した
フランス在住の筆者の個人的な印象
私は南フランスのスタートアップが集まる経済特区周辺に住んでいます。つまり、スタートアップやAIなどの先端技術開発に携わっている友人が多いです。彼らと話した印象では、French TechのNext40/120などのプログラムに選出されることはかなりのアピールになるようで、LinkedInなどのSNSで大きく宣伝しています。つまりそれだけ実績があり、信頼できる施策であることがわかります。
まとめ
本記事ではFrench Techとそのプログラムを紹介しましたが、これを見ると、フランスのスタートアップ業界の盛り上がりがわかると思います。人口が日本の約半分のフランスで、なぜこんなにスタートアップが盛り上がっているのか?それは政府が積極的にスタートアップを支援していることや海外のスタートアップも誘致していることなどが挙げられるのではないでしょうか。
私自身、フランスに住んでおり、スタートアップを誘致する経済特区で働いているのですが、周りの会社を見ると、みんなこのFrench Techに選ばれることを一つの目標にしています。ここから多くのユニコーン企業、世界のテックリーダーが生まれれば、このような施策・プログラムは世界のベンチマークになるのではないでしょうか。
コメント
[…] 仏政府のスタートアップ支援施策と有望企業選定プログラム【2021年版】フ… […]
[…] 仏政府のスタートアップ支援施策と有望企業選定プログラム【2021年版】フ… […]
[…] 例えばフランスでは、フランス政府が音頭を取っているスタートアップ支援政策・French Techの中の、Next 40/(FT)120というプログラムでは、スタートアップが取り組んでいるセクター(対象市場、分野)の割合は以下ようになっています(2021年の情報、以下のソース参照)。 […]
[…] 仏政府のスタートアップ支援政策French Techにも選出されている注目スタートアップです。 […]
[…] […]
[…] 彼らはフランス政府のスタートアップ支援政策・フレンチテックの中の、主に環境問題を解決しうるスタートアップ20社(FT Green 20)にも選出されています。 […]
[…] […]