フランスでも人気のヘルスケア・スタートアップ、保険業界のDX

ヘルスケア・保険業界のスタートアップトレンド フランス
ヘルスケア・保険業界のスタートアップトレンド

本記事では、近年、フランスで、欧州全体で人気のヘルスケア分野のスタートアップ事情について解説できたらと思います。

お堅い保険業界、新規参入が難しい中、DXにより大型資金調達に成功したフランスの注目スタートアップを紹介します。

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フランスの保険事情

保険業界のスタートアップ動向・フランス
保険業界のスタートアップ動向・フランス

フランスの保険は公的医療保険と任意保険の二階層になっています。

公的医療保険(Sécurité sociale・セキュリテ ソーシャル)は外国人を含めて3か月以上フランスに滞在する場合、加入することになっています。

一方、任意保険(Mutuelle・ミュチュエル)は、「任意」という言葉が付いているものの、一般企業やアソシエーションでは、雇用主が従業員に対し、この任意保険の加入を提案する義務があります。

そして、フランス在住の私のまわりを見てみると、実際、ほとんどの従業員が企業やアソシエーションの提案する保険に加入しています。それもそのはず、提案された任意保険に加入すれば、企業やアソシエーションが保険料の50%を負担してくれるからです

ただし、デメリットもあり、それは企業が提案する保険プランしか選べないことです。ご存知の通り、保険のプランはたくさんありますが、「一択」になります。

そのため、数年に一度、企業内で見直しをするのがほとんどで、実際に任意保険の会社がコロコロ変わります。

日本と同じ?お堅い保険業界

DXの必要性、書類はもう古い?
お堅い保険業界

日本でもそうかもしれませんが、保険業界は信頼がものを言う世界、ベテランプレーヤーが強く、なかなか新規参入が難しいと言えます。

さらに、保険は基本サブスクリプションモデルなので、入れ替わりの少ないです。一度決めたら少なくとも数年は同じ保険を使うので、新陳代謝が進まないのでしょう。

もっと言うと、上で述べたように、フランスでは企業やアソシエーションが従業員に対して保険料を50%負担する代わりに保険会社・プランまで決める形になるので、広い年代を抱える企業ではどうしても保守的な選択になってしまうでしょう。

実際にフランスでは長い間、任意保険の新規参入企業(+上手くいった企業)がいなかったとのことです。

しかし、ここへ来て、いくつかのスタートアップがその牙城を崩そうとしているようです。

保険業界のDXで躍進!注目のヘルスケア分野のスタートアップ

全世界的に同じようなトレンドだとは思いますが、近年のスタートアップが取り組んでいる事業分野を調べると必ずと言っていいほどヘルスケア分野が上位に現れます。

例えばフランスでは、フランス政府が音頭を取っているスタートアップ支援政策・French Techの中の、Next 40/(FT)120というプログラムでは、スタートアップが取り組んでいるセクター(対象市場、分野)の割合は以下ようになっています(2021年の情報、以下のソース参照)。

  1. 製造業関連:27%
  2. 健康産業(ヘルスケア):23%
  3. フィンテック(FinTech):15%
  4. クリーンエネルギー・モビリティ:12%

ヘルスケア分野は全体の2位、しかも1位の製造業関連と僅差です。それだけヘルスケア分野は注目されています。

そのヘルスケア分野のスタートアップ事情をさらに詳しく調べていくと、以下の二つのヘルスケア・スタートアップはかなりの頻度で登場します。それもそのはず、巨額の資金調達に成功してるからです。

Alan(アラン)

まずは、フランスのヘルスケア・スタートアップ業界で一番有名なAlan(アラン)を紹介。アランはここ数年で巨額(200億円以上)のシリーズD資金の調達に成功し、ユニコーン化したスタートアップです。

各種手続きをオンライン化

保険業界のスタートアップ動向
保険業界のスタートアップ動向

彼らのウリは、まず各種手続きを全てオンライン化したこと、つまりDXです。

従来の任意保険、例えば私が実際に入っている任意保険も、会員ページなどはインターネットでアクセスが可能ですが、病院で受け取ったドキュメントなど、スキャンして、もしくは郵送で送らなければならないことがあります。

私はAlanを実際に使っていないので詳しくはわからないのですが、おそらくこのあたりも全てデジタル化したのではないかと予想します。

医師・病院の検索と予約もオンラインで可能

さらに、彼らは医師・病院の検索と予約もオンライン上で可能にしました。

フランスには病院のオンライン予約システム、Doctolibというものが既に存在し、使い勝手は・・まぁまぁ(個人的な感想)ですが、多くの病院をカバーしており、みんなに使われています。

しかし、当然、保険とは切り離された独立したシステムなので、Alanのように保険とこのようなサービスを同一プラットフォームで扱えるのはかなりアドバンテージがあると思います。

Shift Technology(シフト テクノロジー)

Insurance(保険)+Tech(技術)の「Insurtech」を体現しているShift TechnologyもAlan同様、大注目のスタートアップです。

フランスのAIスタートアップを資金調達順に紹介している以下の記事では、このShift Technologyが堂々の一位に輝いています。

AIを用いた「詐欺」検出

詐欺、架空請求のリスク
詐欺、架空請求のリスク

このShift Technologyは「保険+AI」で他の企業と差別化しています。具体的にはAIを用いて、保険手続きにおける「詐欺」を検出するとのことです。疑わしい請求を自動検出しユーザに警笛を鳴らしてくれシステムを構築しています。保険は一部の詳しい人を除き、システムが複雑なため、例え架空請求が来てもわかりませんよね。このShift Technologyの技術を使えば安心感が違いますね。

保険請求時の必要な情報の入力を自動化

詐欺検出と同様に、AIを用いることで、保険請求時の必要事項入力を自動化も行えます。フランスは特に書類の国なので、手続きの際にはたくさんの書類を作成することになります(日本もそうですよね)。当然、多くの情報を記入しなければなりませんが、そのような情報入力を自動化してくれます。

これらは上記の詐欺検出と同じプラットフォームで行えるので、つまり、詐欺検出をチェックしつつ、情報入力を簡略化してくれる、本当にユーザにとって最高のおもてなしサービスと言えるのではないでしょうか。

まとめ

お堅い保険業界においても、DXそしてAIの波はきています。今までの常識が、デジタル化、そして人工知能の活用によって覆されようとしていて、もしそうなったとき、保険業界のような堅い世界こそインパクトは大きいです。我々も、これらのスタートアップを見習い、いつも何気なく使っているものに対して「これって本当に必要なの?」といった本質的な部分への問いかけを行うことで、大きなインパクトを生むアイデアが思いつくかもしれませんね。

また、上記二つのスタートアップのようにデジタル化をすることで、これからもどんどんデータが集まり、AIの精度も高くなっていきます。このような好循環サイクルをいかにデザインするかも、これからスタートアップを挑戦する方にとっては大切な点だと思いました。

筆者プロフィール
この記事を書いた人

フランス在住(現地採用)。工学博士。移民。
大学時代から人工知能・コンピュータビジョンの研究に従事し、現在までにディープラーニングを用いたCT画像中の肺結節の悪性判定システムや、車載センサーデータにおける認識処理を用いた自動運転システムの開発を遂行。

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コメント

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