本記事では2014年~2021年までの過去7年でユニコーン化したスタートアップ企業を紹介します。
本記事を読めば、フランスの過去7年でユニコーン化したスタートアップ15社のビジネスモデル・事業内容をざっくり把握することができます。
(全編の本記事では、15社のうち7社を紹介、残りの8社は後編の記事にて紹介)
前編の記事はこちら
本記事では、以下のツイートにある年表を見ながら時系列で追っていくことで、近年の仏スタートアップ事情を掴んでいきます。
以下、各スタートアップについて説明します。
フランス過去7年のユニコーン化したスタートアップ年表
以下、フランスにおける、2014年から2021年の間にユニコーン化したスタートアップの年表です。2017年を除き、毎年ユニコーン企業が生まれています。さらに、ここ3年は一年の間に3,4社がユニコーン化していることがわかります。
2014 | DEEZER |
2015 | OVH.com |
2016 | BlaBlaCar |
2018 | Veepee |
2019 | Meero, Mano Mano, Doctolib |
2020 | CONTENTSQUARE, Voodoo, MIRAKL, invalua |
2021 (Q1-Q2) | Vestiaire Collective, alan, Shift Technology, Back Market |
それでは以下、各社の事業内容を見ていきましょう
【2020】CONTENTSQUARE
CONTENTSQUAREは(モバイル用も含む)Webサイトにおけるユーザーの行動分析を行うツールを提供しています。
例えば、Webページのどの部分にユーザが着目しているかなどを数字で表すことができます。また、ECサイトやサイト中の広告に対してのコンバージョン率(商品を購入してくれた割合)などからUXの課題を抽出することを可能にします。
【2020】Voodoo
スマホ向けのゲームを開発、販売する会社。シンプルで、無料から遊ぶことができるカジュアルゲームを多数提供している。
彼らのサイトによると、今までに50億回ダウンロードされているとのことです。
たしかにゲームの画面を見ると、とてもシンプルで、だれでも楽しめる雰囲気が伝わってきます。暇つぶしにちょっとゲームしたいというときにぴったりかも。
また、アプリ開発も承っていて、動画を用いるサイト、ソーシャルメディア、ニュースサイト、キュレーションサイトなどの開発可能とのこと。
【2020】MIRAKL
MIRAKLは主にB2CまたはB2Bのオンラインショップを作成するスタートアップです。要望にフレキシブルに対応できる点、顧客データの解析可能な点などが評価され、成功を収めているようです。
サイトに記載のクライアントリスト(MIRAKLを利用している企業リスト)をみると、錚々たる顔ぶれ、フランスに居れば一度は使ったことのある企業ばかり。例えばCarrefour、DARTY、Conforama、GO SPORTなど。私もこれらの企業のオンラインショップを利用させてもらいましたが、見やすいですし、よく整備されているなという印象です(フランスのオンラインショップはひどいものも多いので、それらと比べると雲泥の差)。
Shopifyなどオンラインショップ作成サービスにおいては競合もいるでしょうが、MIRAKLは企業向け、もっと言うと大きな企業を対象としているため、差別化されていると言えます。さらに彼らの実績から既に多くのコネクションを持っていると想像できるので、まだまだ伸びるのではないでしょうか。
【2020】Ivalua
Ivaluaは “Source-to-Pay(サプライヤーの選定から製品受け取り後の支払いまで)”をデジタルトランスフォーメーションするシステムを提供するスタートアップです。
invaluaのシステムを導入すれば、サプライヤーの可視化や支払い管理の工程をよりスピーディーにできるとのことです。
想像するに、調達プロセスにはかなりの作業が存在し、そしてそれらはまだまだ人手によってなされていると思います。Ivaluaはそれら調達プロセスの全てをデジタル化することで効率化・高速化し、さらにデジタル化の恩恵・データ解析を行うことで、ユーザの意思決定をより精度の良いものにすることを目指しています。
【2021】Vestiaire Collective
Vestiaire Collectiveは女性向けのファッションアイテムのECサイトです。サイトを見た感じ、高級ブランドをメインに扱っているようです。
Gucci、Hermes, Louis Vuittonといった高級ブランドのオンラインショップです。正規店の正規の値段ではなく、アウトレット価格のように割引して販売しています。また、新しいブランドを紹介しているページもあったり、ファッション好きには魅力的なサイトなのではないでしょか。
扱っている製品としてはバッグや時計、アクセサリーなどが多そうです。日本人にもファンが付きそうなサイトですね。
【2021】alan
alanは主に中小企業向けの任意保険を提供しているスタートアップです。フランスのスタートアップを検索すると必ずと言っていいほど出てくるのがこのalan。今までに巨額の資金調達(200億円以上、シリーズD)に成功しています。
alanはすべての保険手続きをオンライン化し、また医師・病院の予約もalanのプラットフォームからオンラインで可能になりました。
保険業界は保守的なところが多い中、大胆なDX戦略が成功したのだと思います。実際、私はフランスに住んでいて、保険関連の書類処理や手続きの煩雑さに苦労していましたので、それらを一気に解決できるポテンシャルを持っていると感じました。
alanと次のShift Technologyに関しては、以下の記事で詳しく紹介しているので、是非ご覧ください。
【2021】Shift Technology
Shift TechnologyはAIを用いて保険の「詐欺」を検出するシステムを提供しているスタートアップです。
具体的には、疑わしい請求を自動検出しユーザに警笛を鳴らしてくれシステムを構築しています。また同時に、AIを使うことで必要事項入力を自動化も行っています。
Insurance(保険)+Tech(技術)の「Insurtech」を体現しているShift Technologyもalan同様、大注目のスタートアップです。
Shift Technologyも上のリンクにおいて詳しく紹介されています。是非ご覧ください。
【2021】Back Market
Back MarketはiPhoneやタブレットなどを再調整(バッテリー交換、クリーニング)して販売しています。扱う商品としてはApple(iPhone, iPad, Macbook, Airpods)やDysonの商品など、中古品市場でも比較的高値で取引されているものです。
フランスでは、中古品販売が盛んに行われています。特にiPhoneなどは再調整品がかなり出回っている状況です。スマホの新品は低価格のためandroidが売れているようですが、やはりappleブランドを所持したい、使いたいという要望は大きく、そのため、再調整品市場が盛り上がっているようです。
再調整品を含めた中古品は個人間でも売買されているようですが、クオリティ面でやはりトラブルも多いとのこと。一方、このBack Marketは再調整を専門に行っている、言わばプロ集団、ここで買えば間違いないという安心感が武器になっているはずです。
【2021】Swile
Swileはクレジット機能、Apple pay、Google Pay、さらにはフランスのサラリーマンの多くが使っているレストランチケット(福利厚生でもらえる金券)など、全ての機能一枚のカードにまとめたスマートカードを提供するスタートアップです。
近年、クレジットやデビットカードに加えて、Apple Payなど、支払い方法が溢れています。それらをたった一枚にまとめたSwile。
さらにアプリとも連携しており、複数プラットフォームで支払っても、それらを統合した収支表示などを簡単に観覧することができます。
まとめ
2回にわたり、近年のフランスのユニコーン企業を紹介してきました。
本記事で紹介したフランスのユニコーン企業は以下の通り
2020 | CONTENTSQUARE | Webサイトにおけるユーザーの行動分析ツール |
2020 | Voodoo | スマホ向けのゲームを開発、販売 |
2020 | MIRAKL | B2CまたはB2Bのオンラインショップを作成 |
2020 | Ivalua | Source-to-Pay(サプライヤーの選定から製品受け取り後の支払いまで)をDX |
2021 | Vestiaire Collective | 女性向けのファッションアイテムのECサイト |
2021 | alan | 中小企業向けの任意保険を提供 |
2021 | Shift Technology | AIを用いた保険の「詐欺」検出 |
2021 | Back Market | iPhoneやタブレットなどを再調整(バッテリー交換、クリーニング)して販売 |
2021 | Swile | クレジットカードやApple Payなどを一枚にまとめたスマートカードを提供 |
傾向としてはオンラインショップ、DXツール、ゲームなど世界と同じトレンドが見て取れます。
しかし、特に近年では、長年大きな変化の無かった保険業界にアプローチするなど、現地の課題をよく分析し、DXで圧倒的に使い勝手を改善することで、既存プレイヤーを脅かすスタートアップの台頭も見られます。
在仏の身として、既存のかなり使いづらいツール・システムを知っているだけに、スタートアップの活躍には期待したいところです。
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